環境創造(カーボンニュートラル)に関する調査研究

 

 カーボンニュートラルに向けた対策には、温暖化の原因となる温室効果ガス排出量を削減する「緩和策」に加え、気候変動の影響による被害を防止・軽減するための対策である「適応策」が必要とされています。

 効果的な適応策の推進のためには、将来の気候変動が社会や人々の生活にどんな影響を与えるのか、詳しく予測することが重要です。福島県では適応策の推進を図るため、激甚化が予想される自然災害が産業・経済活動にどういった影響をもたらすか、被害額を推計する研究を行っています。

 

調査研究の概要

 

間接被害額を推計する将来シミュレーションモデルの構築

・自然災害による被害は、大きく直接被害と間接被害に区分できます。
・建物や機械・設備の破壊を直接被害、営業停止や投資の減少といった被害を間接被害と呼びます。
・気候変動に対する適応策の効果を評価していくためには、間接被害まで含めた潜在被害の推計が
 重要です。
・そこで経済分析等に使われる応用一般均衡(CGE)モデルを用いて、将来シミュレーションモデル
 を構築しました。

 
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対象地域

 
福島大学と連携し作成した『福島県の気候変動とその影響の予測』から、潜在洪水被害額(直接被害額)が最大であった、いわき地域をケーススタディとして選定し、分析を行いました。 20250325_2.png 20250325_3.jpg 
 

 

図2:福島県といわき地域の位置

 
 

検討シナリオ


・IPCC 第 6 次評価報告書表で
 用いられた社会経路シナリオ
 (SSP:Shared Socio-
 economic Pathway)を用い
 て、将来シミュレーションを
 実施しました。

表1:社会経路シナリオ(SSP)

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潜在的洪水被害の直接・間接被害額比率(2100年期)

 

・SSP1-2.6シナリオにおける直接被害額を1として、それに対する間接被害の比率を推計した

 結果が図3です。
・推計の結果、直接被害だけでなく間接被害の影響も大きいことが分かりました。
・また、気候変動が激甚化するにつれて、間接被害も大きくなることが分かりました。

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図3:潜在的洪水被害の直接・間接被害額比率(2100年期)

 
 

潜在的洪水被害による地域内生産額および家計消費額の変化率(2100年期)

 

・気候変動が激甚化すると、地域内の生産額と家計消費額は、どちらも減少することがわか

 りました。

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図4:潜在的洪水被害による地域内生産額および家計消費額の変化率(2100年期)

 
 

潜在的洪水被害による地域外移出額および地域内移入額の変化率(2100年期)

 

・気候変動が激甚化すると、他地域への移出額と他地域からの移入額は、どちらも減少す

 る傾向がみられました。

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図5:潜在的洪水被害による地域外移出額および地域内移入額の変化率(2100年期)

 
 

潜在的洪水被害による消費者価格の変化率(2100年期)

 

・気候変動が激甚化すると、消費者価格は上昇する傾向がみられました。
・また、特に第1次産業で消費者価格の上昇がみられました。

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図6:潜在的洪水被害による消費者価格の変化率(2100年期)